川口潤也Junya Kawaguchi

料理考

この料理考は【料理】を作るために「世界」の「理」を理解し、それを推し進めるための「料(はか)り」を得ることを目的とする。

世界とは、「世」=過去・現在・未来の時空間、「界」=上下左右東西南北の三次元空間とした仏教用語である。

気(空気)、水、土、木、金の5つの要素を外的要素とし、その中心に時間と火(蝋燭)を置く事でホモサピエンスの料理法の図としている。
中心に近ければ熱量が高く、中心から遠ざかることで熱量は低くなる。
これを「界」とする。

また、脂、水、気の三要素が一体化しエネルギーに向かう、三角錐のマテリアルを万物の素材【MATERIAL】と見立て、連続する時間とそれぞれの外的要素がある図を用い、素材を調理することを仮定している。
これを「世」とする。

「界」で重要なことは図を平面で見ることであり、「世」で重要なことは図を時間で見ることである。

この図を中心だけ変えずに回転させ、マテリアルの位置をずらす、マテリアルを足す、マテリアルをそのまま置いておく等、調理をする人物が意思を持ちながら選択し、人があらがえない解像度の高すぎる自然現象に委ねることによって、【料理】が作られていく。

これは一つの品物を作るために使うのではない。
料理考は、連続する調理法と変化していく【MATERIAL】を、既存の料理名とレシピから解き放ち、料理文化の多様性と類似点を想起させ、新たな調理法や、食材として見ていなかった素材を通じた自己の持つ価値観への懐疑、古き食の復元などの考察を可能にする。

川口潤也Junya Kawaguchi

1993年青森県生まれ、在住。
循環する自然物への畏敬と現代の食への懐疑を携えながら料理を螺旋状に考察・表現することで料理人の存在意義を追求する。
2018年 料理という表現方法を用いて、完全予約制「澱と葉茶寮」を開始。
2019年 循環をテーマに、食べる美術展「拾うと捨てる」を渋谷某所にて開催。
2020年 水をテーマに、食べる美術展「雫」を上野某所にて開催。

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